29 重力波 #重力 #宇宙
29-1 重力波とは [1]
○重力波( gravitational wave)は、時空のゆがみが波動として光速で伝播する現象。巨大質量をもつ天体が光速に近い速度で運動するときに強く発生する。
○重力波の概念は、アルベルト・アインシュタインが、一般相対性理論を発表した2年後に発表した。
○2016年2月にLIGOとVirgoのチームは2つのブラックホールの衝突から重力波の最初の直接検出に成功した。また、2016年6月に2度目の検出に成功した。[2] [3]
※2つのブラックホールの衝突から発生する重力波(その1)(Credit: LIGO)[3]
※2つのブラックホールの衝突から発生する重力波(その2)(ILLUSTRATION BY C. HENZE, NASA) [2]
○期待される重力波源:超新星爆発、中性子星・ブラックホールの連星系、原子重力波 [4]
※中性子連星の合体からの重力波の検出頻度:10回/年 [5]
※ブラックホールの連星の合体からの重力波の検出頻度:0.4~1,000回/年 [5]
○重力は電磁気力に比べて非常に弱い:10^-36倍 [4]
○重力波の波長:1.5×10^7m(ほぼ地球の直径:1.27×10^7m)以上[4]
○重力波はあらゆるものを通過する。何を通過してもほとんど影響を受けない。
○素粒子物理学の標準理論において重力相互作用を伝達する素粒子として想定されている重力子(graviton)は2016年現在未検出。
※閉じた弦のうち、一番エネルギーが低い状態が重力子。[6]
29-2 重力波により何が分かり、何が可能になるのか?
1)ブラックホールの直接的観測
2)量子重力理論の構築、一般相対性理論と量子論の統合(宇宙の4つの力を統合する理論の構築)
3)ビッグバンやビッグバン以前の宇宙の直接観測
4)宇宙や並行宇宙間の交信
29-2-1 ブラックホールの直接的観測 [2] [3] [7]
○ブラックホールは光を閉じ込めてしまうので、光を使って観測することはできない。
○重力波を使えば、その波長と振幅からブラックホールまでの正確な距離が分かる。
○またブラックホールの衝突データの蓄積により、宇宙膨張の歴史モデルとそれに影響を与える暗黒エネルギーの性質を得ることができる。
29-2-2 量子重力理論の構築、一般相対性理論と量子論の統合(宇宙の4つの力を統合する理論の構築)
○量子重力理論の研究が困難なのは、現在の加速器ではアクセス困難なプランクスケールという非常に小さな世界の観測が必要なため。(大きなエネルギーが必要)[8]
○ブラックホールのように重力が極大な場所を研究できると、量子力学に重力を組み込む量子重力理論の構築が可能になるかもしれない。[2] [7] [8]
29-2-3 ビッグバンやビッグバン以前の宇宙の直接観測[2]
○現在観測可能なのはビッグバンの表面のみ。
○原子重力波を観測できればビッグバンの内側が見える。:インフレーションモデルを整理できる。
※宇宙はインフレーション時代におよそ10^30倍、フリードマン時空に移行してからさらに10^30倍、合わせておよそ10^60倍ほど膨張した。そのため、初期のプランクスケールの情報がインフレーション後に来るビッグバンによって乱されていない。
29-2-4 宇宙や並行宇宙間の交信
○重力子は余剰次元を伝わるため、重力波を使っての並行宇宙同士の交信が期待できる。[7] [8]
29-3 重力波の観測
29-3-1 LIGO(ライゴLaser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)
○一辺が4kmのレーザーマイケルソン干渉計。
○2015年に重力波の直接観測に成功した。[2] [3] これにより一般相対性理論が完全に証明された。
※LIGO [10]
○ノイズを避けるためにLIGOでは反射鏡を4段階で吊るしている。[11]
29-3-2 宇宙重力波望遠鏡:eLISA(Evolved Laser Interferometer Space Antenna)[12]
○3台の衛星で、一辺が100万kmのレーザー干渉計を形成するもので、ESA( European Space Agency)によって進められている。
○eLISAは低周波数での重力波検知を得意としていて、より高周波を対象とするLIGOやVIRGOとは補完しあう位置づけになる。
○観測開始は2030年代
【参 考】
1. 重力波 - Wikipedia
2. Nadia Drake/訳=三枝小夜子“重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語” at NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 20160212
3. Michael Greshko/訳=三枝小夜子” 2度目の重力波観測、天文学はいよいよ新時代へ”at NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 20160617
4. 大原謙一”重力波天文学“ 201404
5.川村静児“重力波検出の原理と世界各国の検出器”20140419
6. 江口 徹“理論で「ひも」解く宇宙”at 東京大学理学部大学院HP
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/labo/10.html
7.No.28 並行宇宙
8. 量子重力理論 - Wikipedia
9. No.97 宇宙人との交信
10. Robert Naeye”Gravitational Wave Detection Heralds New Era”at SKY & TELESCOPE 2016
11. LIGO”LIGO Technology”
https://www.ligo.caltech.edu/page/ligo-technology
12. 宇宙重力波望遠鏡 - Wikipedia
29-1 重力波とは [1]
○重力波( gravitational wave)は、時空のゆがみが波動として光速で伝播する現象。巨大質量をもつ天体が光速に近い速度で運動するときに強く発生する。
○重力波の概念は、アルベルト・アインシュタインが、一般相対性理論を発表した2年後に発表した。
○2016年2月にLIGOとVirgoのチームは2つのブラックホールの衝突から重力波の最初の直接検出に成功した。また、2016年6月に2度目の検出に成功した。[2] [3]
※2つのブラックホールの衝突から発生する重力波(その1)(Credit: LIGO)[3]
※2つのブラックホールの衝突から発生する重力波(その2)(ILLUSTRATION BY C. HENZE, NASA) [2]
○期待される重力波源:超新星爆発、中性子星・ブラックホールの連星系、原子重力波 [4]
※中性子連星の合体からの重力波の検出頻度:10回/年 [5]
※ブラックホールの連星の合体からの重力波の検出頻度:0.4~1,000回/年 [5]
○重力は電磁気力に比べて非常に弱い:10^-36倍 [4]
○重力波の波長:1.5×10^7m(ほぼ地球の直径:1.27×10^7m)以上[4]
○重力波はあらゆるものを通過する。何を通過してもほとんど影響を受けない。
○素粒子物理学の標準理論において重力相互作用を伝達する素粒子として想定されている重力子(graviton)は2016年現在未検出。
※閉じた弦のうち、一番エネルギーが低い状態が重力子。[6]
29-2 重力波により何が分かり、何が可能になるのか?
1)ブラックホールの直接的観測
2)量子重力理論の構築、一般相対性理論と量子論の統合(宇宙の4つの力を統合する理論の構築)
3)ビッグバンやビッグバン以前の宇宙の直接観測
4)宇宙や並行宇宙間の交信
29-2-1 ブラックホールの直接的観測 [2] [3] [7]
○ブラックホールは光を閉じ込めてしまうので、光を使って観測することはできない。
○重力波を使えば、その波長と振幅からブラックホールまでの正確な距離が分かる。
○またブラックホールの衝突データの蓄積により、宇宙膨張の歴史モデルとそれに影響を与える暗黒エネルギーの性質を得ることができる。
29-2-2 量子重力理論の構築、一般相対性理論と量子論の統合(宇宙の4つの力を統合する理論の構築)
○量子重力理論の研究が困難なのは、現在の加速器ではアクセス困難なプランクスケールという非常に小さな世界の観測が必要なため。(大きなエネルギーが必要)[8]
○ブラックホールのように重力が極大な場所を研究できると、量子力学に重力を組み込む量子重力理論の構築が可能になるかもしれない。[2] [7] [8]
29-2-3 ビッグバンやビッグバン以前の宇宙の直接観測[2]
○現在観測可能なのはビッグバンの表面のみ。
○原子重力波を観測できればビッグバンの内側が見える。:インフレーションモデルを整理できる。
※宇宙はインフレーション時代におよそ10^30倍、フリードマン時空に移行してからさらに10^30倍、合わせておよそ10^60倍ほど膨張した。そのため、初期のプランクスケールの情報がインフレーション後に来るビッグバンによって乱されていない。
29-2-4 宇宙や並行宇宙間の交信
○重力子は余剰次元を伝わるため、重力波を使っての並行宇宙同士の交信が期待できる。[7] [8]
29-3 重力波の観測
29-3-1 LIGO(ライゴLaser Interferometer Gravitational-Wave Observatory)
○一辺が4kmのレーザーマイケルソン干渉計。
○2015年に重力波の直接観測に成功した。[2] [3] これにより一般相対性理論が完全に証明された。
※LIGO [10]
○ノイズを避けるためにLIGOでは反射鏡を4段階で吊るしている。[11]
29-3-2 宇宙重力波望遠鏡:eLISA(Evolved Laser Interferometer Space Antenna)[12]
○3台の衛星で、一辺が100万kmのレーザー干渉計を形成するもので、ESA( European Space Agency)によって進められている。
○eLISAは低周波数での重力波検知を得意としていて、より高周波を対象とするLIGOやVIRGOとは補完しあう位置づけになる。
○観測開始は2030年代
【参 考】
1. 重力波 - Wikipedia
2. Nadia Drake/訳=三枝小夜子“重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語” at NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 20160212
3. Michael Greshko/訳=三枝小夜子” 2度目の重力波観測、天文学はいよいよ新時代へ”at NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 20160617
4. 大原謙一”重力波天文学“ 201404
5.川村静児“重力波検出の原理と世界各国の検出器”20140419
6. 江口 徹“理論で「ひも」解く宇宙”at 東京大学理学部大学院HP
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/labo/10.html
7.No.28 並行宇宙
8. 量子重力理論 - Wikipedia
9. No.97 宇宙人との交信
10. Robert Naeye”Gravitational Wave Detection Heralds New Era”at SKY & TELESCOPE 2016
11. LIGO”LIGO Technology”
https://www.ligo.caltech.edu/page/ligo-technology
12. 宇宙重力波望遠鏡 - Wikipedia
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