23 素粒子論的な宇宙論【宇宙とは】宇宙との対話
23-1 宇宙の誕生:量子的ゆらぎ[1]
・現代物理学では、完全な無は存在しない。
・真空若しくは空っぽの空間は真空エネルギーと力を持つ。
・量子的レベルでは、真空であっても、物質(素粒子)と反物質の粒子のペアが生成と消滅を繰り返している。
・宇宙は物質粒子(素粒子)の急速な膨張により誕生した。
※問題が残る。・・・その真空エネルギーと力はどこから来たのか?
23-2 インフレーション理論 [2]
・・・1981年 佐藤勝彦、アラン・グース
・宇宙は誕生直後の10のマイナス36乗秒後から10のマイナス34乗秒後までの間に真空エネルギーのトンネル効果(※)により、空間が相転移し、その大きさが10の24乗倍に膨張(=インフレーション的膨張)したとする理論。
※原子(10^-10m)よりはるかに小さい実宇宙(10^-27m)⇒3ミリ程度(10^-3m)
※膨張速度は光速の60倍超
※トンネル効果:エネルギーの壁を、それより低いエネルギーを持った粒子が通り抜けてしまう現象。半導体はこの原理を利用してつくられている。[3]
・インフレーションにより生じた巨大なエネルギーは熱に変わって宇宙全体を超高音にする。⇒ビッグバン
・インフレーション理論によって、1970年代に指摘されていたビッグバン理論のいくつかの問題点が解決される。[4]
1 観測される宇宙が極めて平坦であること(平坦性問題)
2 宇宙が極めて一様であること(地平線問題)
3 多くの大統一理論 (GUT) のモデルで存在が予言されている空間の位相欠陥が全く観測されないこと(モノポール問題)
<課題と観測>
・数十億年(40億年~60億年)前に始まったとする第2次インフレーションの原動力が未解決の問題として残っている。[5]
・今後は、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙マイクロ波背景放射観測衛星プランクや南極点衛星などによって、重力波の更なる精密探査が行われる事によって、この未解決の問題についての一定の見解が得られるのではないか?と期待がもたれている。[5]
・日本は高精度で全天観測が可能な人工衛星「ライトバード」を2021年度にも打ち上げる予定。
・東大宇宙線研究所などは岐阜県飛騨市に建設中の地下望遠鏡「KAGRA(かぐら)」で2017年度に重力波の観測を開始予定。
23-3 宇宙の膨張[5]
・・・1988年 アラン・グースのフリーランチ・モデル
・物質や放射は「正の」エネルギーだけでなく、「負の」エネルギーも持つことができる。
・負のエネルギーは斥力であり、空間を膨張させる。
・量子ゆらぎにより「負の」エネルギーを持つものが生成されると、そのエネルギーと釣り合う「正の」エネルギーも生成する。
・つまり、閉じられた宇宙においては、宇宙の膨張に伴い物質と放射が充てんされる!
・これは、エネルギー保存則と完全に一致しており、宇宙は究極のフリーランチ!
・グースのモデルは、一般相対性理論の宇宙定数を説明するものと考えられている。
23-4 ビッグバン理論 [6]
・・・1948年 ガモフ
・ビッグバン理論:「この宇宙には始まりがあって、爆発のように膨張して現在のようになった」とする説
・ビッグバン理論は素粒子論的な宇宙論で説明された。
・素粒子論の基本原理では、素粒子は数種類の対称性で説明される。
・このことから宇宙には物質と反物質が同じ量あると想定されるが、反物質は観測されることは稀である。
・ビッグバンでは物質と反物質が同じだけできたが、その反物質をニュートリノがほんの少しだけつまみ取るようにして、物質に変えたという考えもある。[7]
・宇宙における物質の存在という非対称性(反物質がほとんどないということ)は、素粒子論におけるひとつの謎とされている。
☆考察
反物質の基本的な力は斥力であることから、重力・反重力の分離後(ビッグバンから10のマイナス44乗秒後)、反物質は物質よりも高速で拡散したと考えられる。
【参 考】
[1] Can Quantum Mechanics Produce a Universe from Nothing? by Jeff Miller, Ph.D.
http://www.apologeticspress.org/apcontent.aspx?category=12&article=4584
[2] Wikipedia:宇宙のインフレーション
[3] Wikipedia:トンネル効果
[4]「気が遠くなる未来の宇宙のはなし」佐藤勝彦(2013年刊)
[5] 「宇宙が始まる前には何があったのか?」ローレンス・クラウス(2013年11月刊)
[6] No.20 ビッグバン・モデル
[7] 「宇宙は何でできているのか」村山 斉 (p.215)
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