2017年4月14日金曜日

26 超弦理論:量子重力理論

26 超弦理論:量子重力理論【宇宙とは】宇宙との対話

[電磁気力+弱い力+強い力+重力]
○ミクロの世界で働く力やそこで起こる現象は量子論で、巨視的な重力現象は一般相対性理論で説明できるようになっている。
○そして、1980年頃から世界中の科学者が量子論と一般相対性理論を統一して、ミクロから巨視的な世界までを説明できる超弦理論の開発に取り組んでいる。
○量子論は重力との相性が悪く、量子論を重力に対して当てはめると矛盾した結果が得られてしまう。

○例えば、(初期の)宇宙のサイズが点のように小さいとすると、そのエネルギーは無限大になる。この点のことを特異点という。
○特異点では時間も空間も消滅し、すべての物理法則が成り立たない。
○弦理論のように、素粒子は点ではなく、ひもでできていると考えると特異点が出てこない。

○超弦理論では、素粒子を弦の振動として表すことにより、重力を他の3つの力と同じように扱うことができる。また、超対称性によりフェルミオンとボソンを一つにまとめる(入れ換える)ことができる。
※超弦理論:超対称性を備えた(取り入れた)弦理論

 
※開いた弦と閉じた弦 [1]
○ただし、超対称性があると考えると、粒子と反粒子を反転したパートナー粒子を想定する必要があり、粒子の数は100種類を超える。また、空間の次元は10次元となる。
※様々な粒子を統一的に記述しようとすると、高次元かつ超対称性の理論となる。そして、超対称性を用いると、最高で11 次元の理論までしか存在しない。[2]

○弦理論の余分な6次元の部分(余剰次元:Calabi–Yau manifold)はきわめて微小な「プランク距離」(10^-35m)の大きさに畳み込まれている。そこから素粒子の色んな性質が出てくる。
※弦理論の余分な6次元の部分には時間の次元がないので、ユークリッド空間が曲がったような状況になっており、ゲージ対称性が自然に生成される。[3]
※余剰次元:Calabi–Yau manifold [4]

※ゲージ対称性:あるものさしの世界の物理法則と、別のものさしの世界の物理法則に共通の物理法則が存在する場合、ものさしの変換規則が必要となる。このものさし(ゲージ)変換規則をもって物理法則が成立することを「ゲージ対称性」と呼ぶ。

○弦理論を用いることで、ブラックホールのエントロピーやホーキング輻射等の計算ができる。[5]

○しかし、この理論の想定する「ひも」の大きさが実証不可能に思えるほど小さい(10^-35m)ことなどから、超弦理論は物理学の定説としての地位を得るには至っていない。

○さらに、ひもだけでなく膜(メンブレーン)にちなんで「ブレーン」と呼ばれる構造(D-brane)が登場してきた。[5] 
※D-braneの ‘D’ の由来 は開弦がこの膜上に固定端境界条件(Dirichlet boundary condition)を持つところから来ている。

<多元宇宙(マルチバース)> [6] [7][8]
・ひも理論では、6次元をどのようにコンパクト化するかによって、異なる物理法則、異なる力、異なる粒子を持ち、異なる対称性に支配された、異なる4次元宇宙が生じる。数学的には、ひとつの10次元ひも理論から、10^500種類もの4次元宇宙が予測される。
・4次元だけでなく、5次元、6次元、さらにもっと高い次元の宇宙さえ埋め込むことができる。
・つまり、宇宙は1つではなく多元であり、並行宇宙があるということになる。

○課題
・2013年4月のLHC実験では、超対称または4次元以上の次元の証拠を見つけることができなかった。[9]
・現時点で、自然界の謎のどれかひとつでも、ひも理論を使って解明できる見通しがあるわけでもない。[5]

○余談
・超弦理論を理解しているのは世界で1,000人! [10]

【参 照】
1. “超弦理論とブレーン世界”at ILCの物理
http://www-jlc.kek.jp/ilcphys/hep_intro/brane
2.今村洋介”11次元超重力理論とMブレーン” 20110415
http://www.th.phys.titech.ac.jp/~imamura/note/m-kiso.pdf
3. 江口 徹“理論で「ひも」解く宇宙”at 東京大学理学部大学院HP
https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/labo/10.html
4. String theory - Wikipedia
5.杉本茂樹 ”超弦理論の魅力”
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~shigeki.sugimoto/YITP50.pdf
6. 「宇宙が始まる前には何があったのか?」ローレンス・クラウス(2013年11月刊)
7.Michio Kaku / New York incandescent classroom "Dream of Einstein " 20150403
8. No.28-1-1 超弦理論とブレーン(薄膜)宇宙モデル
9. Loop Quantum Gravity - Wikipedia
10. 成毛 眞”「超ひも理論」の理解者はパンダより少ない!”at 東洋経済ONLINE 20150512
http://toyokeizai.net/articles/-/69068?page=2

【更新履歴】
20170401 弦の図の添付
20170409 余剰次元の図と余談の追加

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